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Miru Amami(旧ネストアット奄美)

空と海の間にあるリゾート・ヴィラ奄美大島

このリゾート施設は、私の故郷である亜熱帯気候の奄美大島にある。
奄美大島は沖縄と鹿児島県のほぼ中間に位置している。独自の文化と自然を何千年も維持し、近々世界自然遺産にも登録されようとしている奄美群島最大の島で、約6万人の人口である。交通の便は良く、一日に往復で44便も飛行機が発着する。文化は、琉球王朝時代、薩摩藩時代で培った唄や踊り。アマミノクロウサギに代表される森の自然が豊かで、美しい砂浜とサンゴの海に囲まれている。主な産業はサトウキビとフルーツで、昔は泥染めによる大島紬が基幹産業だった。手付かずの自然も多く残っている一方で、本格的なリゾート施設は無かった。

2015年3月からリゾート施設にふさわしい敷地探しを私が自ら行い、2016年8月から着工し2017年11月に竣工した。計画概要は、レストラン、レセプションを含んだ管理棟、温水プール付きの高級ヴィラ3棟、二室連携のヴィラ10棟(合計20室)、以上3タイプの施設で合わせて14棟(合計23室)の建物からなるリゾート施設である。
敷地は、南東に面した高低差が25メートルの崖地で、緩やかに斜面を降りて美しい砂浜へと至り、プライベート感溢れる場所である。奄美の昔ながらの海辺の風景に近づけるように、崖を造成し建物を配置していった。
プール・ヴィラの形状は、奄美の伝統的な高倉や入母屋造の住宅、奄美に生息する貝の形を参考にしながら構造設計者と共に開発していった。その外壁と屋根は、シルバーグレー色の木材で覆われている。この木材は、伝統的な大島紬の製法を参考にしながら実験・開発したものである。タンニンを多く含む地元産の板椎(イタジイ)を鉄分の多い泥に浸けると3〜5日ほどで化学反応が起き、色が変わることを利用した地域素材だ。二室連携のヴィラは、同じ二つのプランを平面的、断面的にずらしながら合わせ、テラス部分で連結するプランも用意している。レストラン棟は、二つの大きな屋根が重なり合い、ねじれ合い、跳ね出すことで、重層的な空間を生み出している。これら全ての屋根にも同じ泥染めの板椎(イタジイ)を用いている。
このような建築の形状や空間の重層性は、このプロジェクトに一貫して流れるコンセプト「ハザマ(間)のデザイン」に由来する。

ハザマ(間)をデザインする

奄美大島の歴史は、中世から近世にかけて琉球王国と薩摩藩にくりかえし領有権を争われ、第二次世界大戦後8年間のアメリカ占領時代を経て1953年に日本に復帰するなど、様々な利害関係に翻弄されてきた。地理的にも歴史的にも様々なハザマで自らの位置を確認してきた島である。私がこの島の出身者であること、個性的で小さな建築の空間を数多く作ってきたこと、様々な地域の素材を活かす構法や構造を開発し建築を作ってきたこと、長い間リゾート施設の研究を続けていることから、このプロジェクトを任されるに至った。計画するにあたり、奄美の歴史の研究、奄美の自然や植物のリサーチ、現状の宿泊施設の研究を行い、奄美をデザインすることは様々な「ハザマをデザインする」ことではないかと思い至った。そのハザマのデザインを5つの観点から考えた。

①海に囲まれた島であるため広大な空と海のハザマの中での自己解放の獲得

②自然と人間のハザマの中で壊されてきた植生を可能なかぎり昔の姿に戻す保全活動

③伝統的な建築と新しい建築のハザマの中で懐かしさと新しさの創出

④伝統的な産業の手法と新しい素材のハザマの中での奄美らしい建材の開発

⑤世界自然遺産登録目前のハザマの中でのバラエティー豊かな宿泊施設の整備と食の充実

「ハザマをデザインする」ことは決してネガティブな思考ではない。

自らの立つ位置を確認しつつ、流されることなく、歴史を参照しつつ、新しさを創出しつつ進んでいく新たな手法であると思っている。

主な受賞

アジア・パシフィック・プロパティ・アワード 2019
「ホテル建築」部門
「新ホテル建設・デザイン」部門

掲載雑誌

Casa BRUTUS No.222 ライフスタイルホテル
婦人画報2018年10月号

WEB

ArchDaily
designboom
gooood(中国語)

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